ちまちま流されるの巻
 ある日、ちまちまは光合成をしていた。
「ちまぁ……」
 太陽をいっぱい浴びて、ちまちまはどんどんでんぷんを作っていた。なんだか元気、今日はつやつやだ!
「ちまっ!」
 それなりに栄養を蓄えると、ちまちまは何を考えたのか川の方へ歩き始めた。川辺につくと、ちまちまは後ろ向きに川につかる。どっちかというと、しっぽだけ。これでちまちまは水分を吸収するのだ。しっぽは根っこの役割をしているのである。
「ちまま〜」
 快適な環境で元気を蓄え続けるちまちま。日当たりも水もあればきっといい種ができるぞ!
「ちま?」
 ふと、川上の方から何か流れてくるのが見えた。それは川の真ん中をゆっくり流れに乗ってやってくる。
「ちまま!」
 それはちまちまの友達の植物ガメだった。とりあえず、ちまちまは友達に手(前足)を振ってみる。しかし、その友達はどうやらのんびり流れているのではなく、間違えて流されてしまったらしく、ちまちまが手(前足)を振っているのを見つけると、慌てて両手両足(全部足)をばたつかせた。
「かめーっ!」
 たすけて〜! らしき叫びを聞いたちまちまは意を決して川の中へ突撃。
 しかし……
「ちまーっ!」
 途中までは良かったが、流れの速い真ん中に差し掛かった途端、いっしょに流されてしまった。元が陸育ちの植物ガメ、そんなにうまく泳げるわけではないのだ。
 しばらくちまちまと友達カメさんは、木の葉のように川の流れにもてあそばれる。
「ち、ちまぁあ〜!?」
「かめえええ〜!!」
 流れにいいように掻き回され、ちまちまたちはすっかり目が回っていた。もし、このまま海に出てしまったら、海水にやられて枯れてしまう。急いで川から出ないといけないのだが、目が回ったちまちま達にはそれもままならない。
 だが、海に近づくに連れて川底は徐々に浅くなり、流れも緩やかになってきた。ようやくめまいの収まったちまちまは、急いで友達のところに泳ぎ始める。
「ちーまー!」
 一生懸命ちまちま泳ぎながら、ちまちまは友達に呼びかける。
「カメ〜……」
 まだちょっと目の回っている友達だったが、ちまちまが一生懸命捕まえて、岸まで運ぼうとしているうちに目を覚まし、手足(全部足)をぱたぱた動かして泳ぎ始める。
「ちま〜……」
 ようやく岸にたどり着いたちまちまと友達の植物ガメは、そこでまた日向ぼっこ(光合成)をはじめた。
 今日はいい天気。ちょっと目が回ったけど、水分もたっぷり。
 ちまちまと友達は、岸辺で日が暮れるまで光合成して、養分をいっぱい作ってからおうちに帰ったとさ。

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